
不動産格付けに大きく影響する借入リスク
不動産を取得したり開発する場合、全てを自己資産でまかなうという例は稀です。
多くは銀行などの金融機関からの融資を受けることになります。
「借入リスク」は不動産経営や不動産投資の資本構成において、借入の占める割合が増加するに伴って発生するリスクを指します。
不動産の価値に占める借入金額の割合をLTV(ローン・トゥ・バリュー 借入比率)と言います。例えば、500億円のビルに投資するために、400億円を借入でまかなったとするならばLTV=400÷500=0.8(80%)となります。
借入リスクはこのLTVで測定します。LTVが大きければ大きいほど借入リスクは高くなります。前述したバブル時代の開発資金の90%を融資でまかなった結果そのリスクが10倍に跳ね上がったのも、この借入リスクです。
リスクの高さは、「100%÷(100%-LTV)」で表すことができます。
つまり90%を融資で受けると、自己資本率は10%ですから、100%÷(100%-90%)=10となるわけです(この比率をレバレッジ効果と呼びます)。
ですから、融資の比率が高ければ高いほど、レバレッジは大きくなり、リスクは大きくなる。
不良債権問題は、この借入リスクを甘く見た代償でした。 そして、今後は、その比率、LTVが、不動産証券化商品の格付けにおいて重要な指標となります。
突然拡大する危険をはらんだ流動性リスク
「流動性リスク」は売却しようとしたときに売れない、仮に売れるとしても、その時の市場価格よりの低い価格でしか売却できないリスクのことです。
先の不動産のマイナス特性の中で見たとおり、不動産の場合、流動性リスクは大きいものがあります。
株式の商いは、時間単位ですが、収益不動産を売却するには、月多淫にでの時間が必要となります。
つまり、仮に買い手を見つけることができたとしても、実際の売却までに売買条件の交渉、物件の調査(デューデリジェンス)、などの時間が必要となるからです。また、流動性リスクで気を付けるべきことは、突発的にそのリスクが大きくなることがあることです。
バブルつぶしのために不動産関連の融資を規制した政策が取られたことがありましたが、その政策ではこの流動性リスクが返りみられなかったといわざるを得ないところがあります。
つまり、それまで何とか売買が成立していた不動産市場が、そうした外的な背作によって完全に止まってしまう。
すると突然価格が下落し、顕在化していたさまざまなリスクが一気に噴き出してきます。
しかも、不動産投資には不可逆性があります。すなわち、投下した資金の一部あるいは全部を回収することはできません。また一度大きく一方に傾いたものが、すぐに元に修復するということはありません。
このことも流動性リスクの場合には、留意する必要があります。
流動性リスクは、不動産が証券化されれば一挙に解決するようにいわれていますが、実際には不動産証券取引市場が整備されていること、そこでの取引量がある一定のレばるまで達していること、などの前提が必要となります。
したがって、単に証券化されたからといって不動産の流動性が自然に高まるわけです。
物価変動に影響されるインフレーションリスクバブル時代は、不動産には高いインフレヘッジ機能があるといわれるほど、不動産はインフレをものともしないところがありました。しかし、今後はそうはいきません。
「インフレーションリスク」とは、世の中の物価が変動することで不動産の価値に影響が出ることです。
例えば、インフレ率が5%だとすると、1年後には資産の名目価格(見た目の価格)は105(もとの価格を100とすると)となります。 ところが不動産価格だけは上がりもせず、下がりもせず名目価格は100のままだったとします。
この場合の不動産の実質的な価値はどうでしょう。 不動産の実質価格は名目価格を物価水準で割ったものですから100÷105(×100)=95となります。 他の資産は105÷105(×100)=100が実質価格ということになります。 逆にこの例で不動産価格が10%上昇して110になったとします。この不動産の実質価格は110÷105(×100)ですから104ということになります。
他の資産は先程と同様に100=105÷105(×100)ですから、不動産は他の資産よりも価値が増加したと言えます。 バブル時代以前は後者の状態がずっと維持されてきました。
ただ、今後はインフレ率を上回る賃料の上昇を期待することは難しくなってきます。
逆にそのリスクをどうヘッジしていくかが、課題になってきます。
資産価値を大きく左右するマネジメントリスク
今後、不動産に高い資産価値を維持させるために注目されているのが、建物のマネジメントの優劣です。
空室率や賃料はそのオフィスビルへの維持管理状況、あるいはテナントへのサービス水準によっても変動します。
その結果、そのマネジメントの優劣による「マネジメントリスク」が発生してきます。
例えば、全く同じ仕様のビルを隣接して建てても、そのビルの維持管理やサービスが異なれば、それは賃料や空室率に大きく影響を及ぼすことになり、ビルとしての価値に大きな開きを生むことにもなります。
だからこそ、不動産にとって、このビルマネジメントを行う「プロパティマネジャー」の存在が脚光を浴びることになるのです。
MBSなどで要注意の金利リスク
「金利リスク」は金利の変動により生じるリスクで、資金の貸し手にも、資金の借り手にも直接影響します。
全ての金融商品と同様、不動産も金利の変動に大きな影響を受けます。
特に開発資金の大半を融資などで借りてビルを建てる場合などは、その影響は甚大です。また、不動産証券化の先兵といわれている住宅ローンを集めて証券化したMBS(住宅モーゲージ担保証券)の場合、この金利の影響で、「期限前償還リスク(繰上償還リスク)」が発生します。
つまり金利が下落した場合、固定金利で住宅ローンを組んでいる借り手は、返済負担を減らすために、より低金利の融資への借り換えを行う可能性があります。この繰上返済をどうケアし、どうヘッジするかも考慮が必要です。
クリーンアップに甚大な損害を生む環境リスク
不動産の価値は、環境の変化に敏感に反応します。大きな公園があった場合に工場が出来たり、周辺に影響を及ぼす大事故が起きたりという場合、計りしれない出費を被ることになります。
また、それまで気付かれていなかった「潜在的な環境問題」が顕在化したことで、大きなリスクを生むこともあります。
近くにある川の汚染や、土壌汚染、放射能汚染などが判明したりしたことで一気に価値が下落することもあります。また、アスベストのように、従来は法的に認められていた建築資材に発ガン性があると報告された場合、資産価値を維持するためには使用箇所をクリーンアップする必要があります。
その額は相当なものです。
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